カレーライターはぴいと行く! カレー激戦区・神田神保町で個性派カレーを食べ歩き

同業種の店舗が多く存在し、互いにしのぎを削りあっている “激戦区” が全国各地に存在します。そんな “激戦区” を食べ歩き、おいしいグルメと街のようすをレポートする企画です。

今回の目的地は、カレー激戦区として知られる神田神保町。カレーライターとして活動し、全国各地のカレーを食べ歩くはぴい氏がご案内します!

カレーライターはぴいの青春と神田神保町

わたしは東京下町生まれ、下町育ち。神田神保町がどうにも性に馴染んだようで、子供の頃からずっと通ってきました。小学校の頃は雑誌「子供の科学」の影響で神田駅そばの誠文堂新光社の模型店に通っていました。その足で秋葉原のガード下、部品横丁でトランジスタやコンデンサーを吟味。はんだごてを振るっては真空管ラジオなど作っておりました。

本も大好きで、神田神保町の古書店を彷徨い歩いては古本屋で時間を忘れて本探し。古い雑誌が好きでクルマやオートバイ、ファッション誌を20年、30年と遡って探すのに夢中でした。児童文学の面白さを知ったのも神保町でした。

神田神保町の街並み神田神保町の街並み

中学校になってアウトドアが面白くなり、山関係の店が集中する神保町に入り浸ります。さかいやで靴を探し、タラスブルバのバックパックを買ってみたり。

高校の頃。駿河台下のアルペンの店頭で映画「私をスキーに連れてって」のプロモーションビデオに衝撃を受けて以来お茶の水のスキーショップに入り浸り。ギター弾くようになってこれまた楽器街をぐるぐるとまわって。

現在は神田岩本町のキッチンスタジオ「デジタルキッチン」を本拠地として活動していることもあり、神田神保町は今でも、自分の日々と切っても切れない街なのです。

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神田神保町で出会う、古きよきカレーと新進気鋭のカレー

その中でも重要な位置を占めていた「カレー」という存在。時間を追うごとにカレーが楽しくなっていきました。

神田神保町に通い、そこで何か食べるとすればやはりカレーです。40年以上通う神田神保町、本当にここ10年ほどで専門店が大きく増えました。

「古書街とリンクする喫茶店文化の延長」というイメージであった神田神保町とカレーとの関係性が変わってきたのを感じます。2011年から続く町おこしイベント「神田カレーグランプリ」の盛り上がりも大きなターニングポイントでしょう。町を歩けば必ずカレー店にぶつかる。それが神田神保町です。

その数300店あまりと言われる神田神保町で、カレーを提供している店。その中でちゃんと特徴があって、街歩きのときに立ち寄りたいなあ、とわたしが思っているお店を3店、紹介します。

Wメインで満足度も2倍! ボーイズカレーの「カレー付きハンバーグ」

ボーイズカレーのカレー付きハンバーグボーイズカレーのカレー付きハンバーグ

共栄堂、1924年創業。ボルツ、ボンディは1973年、エチオピア1988年創業。長い歴史を持つ名店揃いの神保町界隈。ボーイズカレーも1982年創業で、神田神保町で40年を迎えようとしています。

ここで食べるべきは「カレー付きハンバーグ」。いつでも秀逸だと感じる「カレー付きハンバーグ」という名前。カレーをハンバーグに従属する形にすることによって印象を変えています。

ハンバーグをカレーソースで食べるものではなく、カレーもデミグラスソースがかかったハンバーグも、どちらもメインディッシュでその両方食べてしまった! という満足感が強く残ります。

ボーイズカレーのカレーボーイズカレーのカレー

カレーは小麦粉を炒めてカレー粉と合わせるクラシックな洋食スタイル。どろりとしますが、金沢カレーのようなぼってりではなく、ご飯によく馴染んでくれます。キレもあって後味もよく、口中に残る香りが心地いい。

付け合せのケチャップ味のスパゲッティのボリューム、キャベツ刻みもたっぷり乗っていて、それがカレーと別の器でついてくるので食べ方は自由自在。40年もこの場所で町の変遷を見てきているお店で食べるカレーとハンバーグ。昔の神保町の空気を店内に詰め込んだタイムカプセルのような場所なのかもしれません。

ボーイズカレーのシェフとボーイズカレーのシェフと

数十年通い続けたわたしはここでカレーを食べるとこの町でのたくさんの記憶が蘇ります。味と香りというのはそういうものを思い起こさせるキーなのかもしれないなあと思います。

神保町に住んでカレー生活を堪能するなら、OHEYAGO

店舗情報

ボーイズカレー
営業時間 11:00~20:00
定休日 日曜・祭日
住所 千代田区神田神保町2-4
電話 03-3263-1898
最新の営業時間等情報はTwitterでチェック

スリランカの味を堪能! スパイシービストロ タップロボーン神保町店の「ランプライス」

スパイシービストロ タップロボーンの「ランプライス」スパイシービストロ タップロボーンの「ランプライス」

神保町では少数派だった南アジアのカレーもずいぶんお店が増えました。とはいえスリランカはまだまだ少数派。「タップロボーン」のオーナー、カピラ・バンダラさんは2011年青山本店、16年門前仲町店と順風満帆、そして折りからのウィルス蔓延の中、2020年3月に神保町店をオープンしました。

逆風の中、それでも折れずに頑張る彼の明るいキャラクターがどんどん神保町の町に馴染んでいきました。スリランカのミックススパイス「ツナパハ」を実家のお母さんに調合してもらい、2週に1度スリランカから直送してもらうというこだわり。現地に限りなく近い味を再現してくれるお店はそう多くありません。

バナナの葉っぱに包まれた状態の「ランプライス」バナナの葉っぱに包まれた状態の「ランプライス」

名物はスリランカのお弁当「ランプライス」。バナナの葉っぱに包まれて出てきます。お店で食べることも持ち帰ることも可能。冷凍の通販もあります。

ルーツを聞くと「旅行や畑仕事に行くときおかあさんが早起きしてバナナの葉っぱを庭から取ってきて、カレーやごはんを包んでお弁当を作ってくれます。スリランカはオランダ人が植民地にした時代があって、そのお弁当をオランダ人が見てまねをしたのがランプライスの始まり。スリランカ料理だけではなく各国ミックスのお弁当。ポルトガルや南米などの食文化の料理も入って出来上がったものです」と言います。

タップロボーンのカレーバナナの葉っぱを開いたところ

葉っぱを開くと炊き込みごはんにカレーがかかっており、まわりに何種類ものおかずがそえられています。葉っぱでギュッと包んであるので、おかずの味がごはんにしみてそれがなんともおいしいんですよ。バナナの葉に包んで蒸すので葉っぱのよい香りも楽しめます。

甘味の要素があるおかずも多くわたしたち日本人の舌もぐっと掴まれるお味です。店主のカピラさんにそんな話を聞きながら食事をするのも楽しいでしょう。手が空いていればいろいろ教えてくれますよ。

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店舗情報

スパイシービストロ タップロボーン神保町店
営業時間 11:30~15:30 / 17:30〜23:30
定休日 日曜
住所 千代田区神田神保町2-6-3
電話 03-6878-0196
公式サイトはこちら

洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店

実は「洋食膳 海カレー TAKEUCHI」というお店。今回取材する予定ではなかったんです。よい評判は聞いていたしそのうちに、と思っていたんですが、今回、路地を巡るうちに偶然辿り着きました。

そんなご縁から、お店を知って猛烈に皆さんに紹介したくなったんです。路地の奥の奥にカレーののぼりを見つけておやっと思って足を止めたんです。それが「TAKEUCHI」でした。

洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店内

ほの暗い落ち着く店内、カウンター席の席について一息ついて。なにげなく壁を見て思わず小さく声を上げました。このお店が一気に大好きになったんです。店内いろいろな場所に車両番号や行先表示のプレート、JR貨物のコンテナを模した折りコンなどが見え隠れ。店主、鉄道趣味なんだ! 嬉しさが込み上げます。

鉄分多めのアイテムが品よく飾られています。けれど行き過ぎになってない。センス、いいなあ。アンティークとか思い出とかそういう範囲に上手に収めてあって居心地がいいんです。

そしてカレー。これがまたすごかった。おもわずまた声が出てしまいました。これが出て来たら、おじさんだろうがOLだろうが全員ニコニコと顔が緩んでしまうよね。こんなかわいいカレーはそうそうないですよ。

洋食膳 海カレー TAKEUCHIのカレー洋食膳 海カレー TAKEUCHIのカレー

緑の葉っぱは池ですね。そこににんじんの金魚。誰かに教えたくなる可愛さです。そして食べるとすごく美味しい。

洋食膳 海カレー TAKEUCHIのカレー葉っぱの池を金魚が泳ぐ

付け合わせはインドやスリランカの影響もある味でそこに和の要素を入れたりと凝ったものです。梅干しなんか乗っていて、それがまたカレーによくあうんですよ。

カレー、とてもセンスがいいんです。キーマ風カレーなんてミンチしたエビ、タコ、イカを合わせてあって、とても美味しい。そして豚汁まで完全に美味しいんです。

思うにシェフのこのビジュアルへのこだわり。これはわたしが勝手に妄想してるだけですが、あのビジュアル、いや「レイアウト」を見て思い出したものが鉄道模型の極小規格のZゲージ。そして箱庭、盆景、盆栽など日本の江戸の町人文化を思い起こすものも湛えています。これはぜひ一度体験してもらいたい味とビジュアルです。

OHEYAGO(オヘヤゴー)は最短30分後に内見可能

店舗情報

洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店
営業時間 11:30~15:00 ※2021.7.28現在、ランチタイムのみ営業(営業時間短縮要請のため)
定休日 日曜・祝日
住所 千代田区神田神保町1-20-3
電話 03-3292-0523
最新の営業時間等情報はTwitterInstagramでチェック

神田神保町を、そぞろ路地歩き

神保町の街並み車の往来が多く賑わう靖国通り

神田神保町は歩くのが楽しい町です。今回の取材テーマ、いただいてとても嬉しかったのです。路地を歩き、そのまた奥を覗き、そこに発見があったり。先程の「洋食膳 海カレー TAKEUCHI 神保町本店」との出会いなどそうですね。看板建築を見上げ、回り込み、建物の古い装飾をカメラで引き寄せて撮ったり。

もともと好きな街であった神田神保町なのですが、なんで好きになったのかな、と改めて考えました。なんとなくなのですが、他の街よりも時間の流れがゆっくりなのじゃないかと思っているんですよ。

表通りの靖国通りなんかはもちろん東京スピードで動いでいます。でも、ちょっと一本路地に入るととたんに時間の流れが緩やかになったような感覚になります。それはたぶん、カルチャーというキーワードかなと思います。

神保町の街並み古書店が立ち並ぶ神保町の街並み

本、スポーツ、楽器、カレー。そういうものを求め、探す人たちとそういう人々を受け入れてきた街の人と風土。そういうものがこの町の時間をゆっくり目に進めているんじゃないかと思っています。

どんな町でも同じですが、町は人が折り重なってつくってきた空気というものがあります。神田神保町には古本、学生街とそれに呼応するボリュームある量を提供する飲食店や喫茶店文化、スポーツ街、楽器街、そしてカレーの町というレイヤーがありました。それらが重なり、時代時代で輝いたり、薄れたりしながら醸成してきた空気というものを感じます。

それもこれも人というもの、住んでいる人とこの町を訪ねてくる人が媒介になって出来上がっているのだと思うのです。この空気の中、過ごせる時間をとても愛おしく思います。

※本稿で紹介した店舗情報につき、新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

Text & Photo by はぴい Edit by 鈴木紀子