「部屋の雰囲気を変えたいけど、賃貸物件だとなかなか難しい……」こんなちょっとした悩みを抱えている方、多いのではないでしょうか。賃貸物件となると退去時の原状復帰がマストなため、できることと言えばカーテンや照明の色、家具の配置を変えるくらいで、劇的な変化を求める人にとっては少々味気ないですよね。しかし、部屋の雰囲気により大きな変化を生む方法があります。それは、“壁紙”を変えること。
今回は、賃貸でも壁紙をアレンジできると人気な輸入壁紙専門店WALPA様(以下WALPA)に取材し、賃貸物件にオススメの壁紙施工方法や壁紙の選び方などを教えていただきました!
日本の壁紙は約99%が “白”
「壁紙との出会いの場を提供したい。」をコンセプトに、国内外14カ国から取り寄せた約160ブランド、2万種類の壁紙を販売するWALPA。詳細は後述しますが、そのうちの多くが貼って剥がせるタイプだそう。2011年にオンラインストアをオープンし、現在は東京と大阪に実店舗を構えています。

日本の家屋は真っ白な壁紙が主流と言われており、その割合はなんと(約)99%! そんな日本に海外の個性的な壁紙を輸入し始めたパイオニア的存在がWALPAなのです。なぜ、WALPAは海外の壁紙に着目したのでしょうか。今回は大阪店のストアマネージャー・岡本美岐さんにオンラインでお話を伺います。

「WALPAを運営する株式会社フィルは、もともと日本の壁紙商材を扱う『壁紙屋本舗』というサービスを運営していました。サービスを続けていく上で強く感じたのは、“日本の壁紙は閉ざされている”ということ。日本の文化は海外から高い評価を受けているにも関わらず、壁紙に個性を持たせる文化はガラパゴス化している(取り残されている)と感じたのがキッカケで、WALPAのサービスを始めました」
− 海外では壁紙に個性を持たせることが当たり前なのでしょうか。
「日本のような真っ白の壁紙は少ないです。一見白に見えたとしても、薄く色が入っていることがほとんど。インテリアとして白い空間をつくるときだけ、真っ白の壁紙を使うことはあります。
海外では “壁紙を楽しむ” 文化が根付いています。新しい壁紙にしたいと思ったら、接着力の低いのりを使用して貼って剥がすか、ミルフィーユのように何層も壁紙を重ねていきます。子どもの頃は子ども用の壁紙を貼り、そこから歳を重ねていくごとに好きなデザインへと変えていく。日本のように同じ壁紙を数十年も変えないで過ごすことは珍しいのではないでしょうか」
− 日本と海外で壁紙に対する感覚に差が生まれた理由は?
「日本の建造物は木造で柱のある家屋が一般的でした。そのため、壁ではなく襖や障子を楽しむ文化で、壁があったとしても土壁や砂壁です。ドイツの『rasch(ラッシュ)』という壁紙メーカーが創業した1861年、日本はまだ江戸幕府である点を踏まえても、日本は壁紙の文化自体がまだまだ浅いと言えます。
また、賃貸物件の “原状復帰” に対する概念も日本と海外とでは異なります。例えば、ヨーロッパでは壁面のペンキ下地にペイントして退去すれば問題ない。日本は手を加えてはいけない認識が根強いのも一つの理由でしょう」
− 現在は賃貸物件のほとんどの家屋が壁紙となっていますよね。WALPA創業当初から比較すると、壁紙を貼りかえる方は増えているのでしょうか。
「少しずつ広まってきたと感じています。WALPA創業当初は、賃貸物件にお住まいで壁紙を貼りかえる方なんてほとんどいらっしゃらなかったです。そんな中、壁紙の貼り方をレクチャーしたり、ご自身で壁紙の施工を楽しんでもらえるような取り組みをしたりしたことが功を奏してきました。
現在は巣ごもりの影響で、オンライン会議をする方、YouTuberの方などのお客様が増えてきました。ご自身の背景にオシャレな壁紙を飾りたい方が、ここ最近とても増えています」
トレンドの壁紙は「ミューラル」
− どのお部屋に “貼って剥がせる壁紙” を活用されている方が多いのでしょう?
「本当にいろいろな活用方法がありますけれど、プライベート空間を飾る方は非常に多いですね。自室やトイレ、リビングなど。天井やキッチンカウンターに貼る方、お客様をもてなすお部屋や玄関のウェルカムウォールをシーズンごとに変える方もいらっしゃいます。
壁紙にも流行があり、一定のスパンで新作が出るので、定期的に壁紙を変えて楽しむ方も多いですよ」
− 壁紙にも流行があるんですね。
「ファッションと同じだと思っていただていいかもしれません。最初に新しいテキスタイルのデザインが世に出て、ファッションにそれらが反映され、そのあと壁紙やインテリアにトレンドが変遷していきます。一定の周期でトレンドに合わせた新作が出てくるイメージですね」
− 現在、需要の高い壁紙を教えてください。
「流行りに関係なくニーズが高いのは北欧系(ノルディック系)の壁紙です。手持ちの日本製造の家具とも合わせやすく、日本の方に好まれるデザイン、カラーが多いため、ロングセラーになっています。
それ以外でニーズが増えているのは、コンクリート調や石目調。オンライン会議に映る部屋をインテリジェンスに演出したい方からは、本棚のデザインが人気です。それからミューラルといって、貼り合わせていくと1枚の絵になる壁紙がトレンドです」


「これまで輸入壁紙は “リピート” と呼ばれる柄が等間隔で繰り返されるデザインが主流でした。リピートデザインには、水平方向に同柄が一直線に並ぶ “ストレート”、斜めに並ぶ “ステップ” があります。一方ミューラルは、大きなデザインのシート割りしたものを連ねることで1枚の絵が完成する壁紙です。壁画的壁紙は、空間におけるテーマを大切にされる方から人気を集めています」
壁紙選びの前に知っておくべき、4つの大事なこと
WALPAや壁紙についての知識が深まってきたところで、賃貸物件で壁紙を変える方法を岡本さんからお話しいただきました。まず、事前に知っておくべき “4つの大事なこと” からご紹介していきます。
1 不織布(フリース)素材を選ぶ
壁紙には「紙」と「不織布(フリース)」の2種類があります。日本で主流の壁紙は、表面がビニールで裏面が紙。一方海外で壁紙の主流は、裏面が不織布(フリース)素材だそう。WALPAで取り扱う壁紙の多くも、不織布(フリース)素材です。


紙素材の場合、貼ってしまうと剥がすことができないため、賃貸物件には不向き。退去時に原状復帰が必須な物件は、不織布(フリース)素材を選びましょう。
2 デザインは無地より柄ものを選ぶ
無地の方が施工が簡単そうと想像される方が多いのですが、意外と柄物の壁紙の方が、目すきや下地の不陸が目立ちにくく初心者向きです。
一方、柄もののデザインは、少しズレても境目がわかりにくいのが利点です。施工の際も柄同士をスライドさせながら調整できるので、簡単に貼り付けることができます。
3 薄すぎない厚さの壁紙を選ぶ
賃貸物件の壁紙の多くは凹凸のある白い壁です。その上に薄い壁紙を貼ってしまうと、下地の凹凸が目立つ場合も……。そのため、初めて壁紙を貼る際には、厚さ0.3~0.5㎜の壁紙がオススメとのこと。
4 障害物の少ない壁から試す
初めて壁紙を貼る際には、障害物の少ない場所を選ぶのがベスト。リビングのTVボードの後ろや玄関入ってすぐの廊下の壁などを選ばれる方が多いそうです。また、梁下(はりした)があれば高くても縦2m程度のため、女性でも手が届きやすく貼りやすいのでオススメとのこと。
「失敗しても目立たないところ」という理由から最初にトイレの壁紙を貼りかえる人も多いようですが、トイレは空間が狭い上に便器やトイレットペーパーホルダーなどの障害物も多く、初心者には少しハードルが上がります。しかし、「家具などがない分、コーディネートを意識せず好きなデザインを思いっきり貼る楽しみもある場所です」と岡本さんは言います。
初心者にオススメの施工方法
不織布(フリース)壁紙には、「フリース専用粉のり」「両面テープ×マスキングテープ」「ホッチキス」と3つの貼り方があります。中でも最も初心者かつ賃貸物件にオススメなのが「フリース専用粉のり」を活用した施工方法です。壁に「フリース専用粉のり」を塗り、その上に壁紙を貼っていきます。
「不織布の壁紙の貼り方手順動画」
※動画はイメージ映像のため、一部実際の施工とは異なる手順をしている場合があります
乾いた後は手でペリッと簡単に剥がすことができます。よっぽどのりが薄くない限り、剥がそうとしなければ剥がれないのでご安心を。
「壁紙の剥がし方動画」
「フリース専用粉のり」を使用しながらの施工方法では、以下のアイテムが必要になります。
貼ってはがしやすい輸入壁紙専用粉のり、地ベラ、撫でハケ、竹べら、カッター、ジョイントローラー、ハケ、ローラーハケ、ローラーハケ用トレイ、スポンジ
WALPAには、壁紙施工に必要なアイテムも取り揃えられています。中でも初心者にオススメなのが、「貼ってはがしやすい輸入壁紙施工道具11点セット(粉のりタイプ)」。上記に記載したアイテムが全て揃っていますよ。
また、セットに入っている専用粉のりの1袋分の量は壁紙6ロール分のため、6ロール以上の壁紙を使用する場合はのりを余分に用意しておきましょう。
お子さんと一緒に壁紙の施工をしてみたい方には「キッズ用壁紙施工道具5点セット」もオススメ。通常のアイテムと比較すると小さめなつくりになっているので、狭い場所の施工にも使用可能です。
また、マストアイテムではないもののあると便利なのが「和紙テープ」。壁紙のつなぎ目(ジョイント)部分に和紙テープを使用すると、よりキレイに仕上がるそうです。
後編では、初心者でも理想の壁紙に巡り合える「壁紙の選び方」や、WALPAオチオシの壁紙をご紹介します。
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Text by 阿部 裕華