もし職場や学校の場所にとらわれずに住む場所を決められるとしたら、あなたはどの街を選びますか? おそらくかつて住んだことがある場所や訪れたことがある場所が頭に浮かぶ方がほとんどだと思います。
では、全国各地に拠点をもち、旅するように暮らす “アドレスホッパー” と呼ばれる人に「いま、自分が一番住みたい街」を聞くと、どんな答えが返ってくるのでしょうか。今回は、多くの拠点を渡り歩く旅暮らしの物書き・中馬さりのさんにお話を聞いていきましょう。
中馬(ちゅうまん)さりの●1992年、東京生まれ。文化女子大学服装学部卒業。アパレルメーカーに勤務後、2017年に執筆業で独立。自主運営のWebマガジン「わたしはあの人で、あの人はあの子でできている。」は合計4万PVを突破。ファッションブログ「GALLERIA」は月平均2万PVを継続。現在はWeb文芸誌への寄稿やプロモーション用小説の執筆なども含め広く活動中。旅暮らしの様子は個人のYouTubeでも発信している
新旧の文化が入り乱れる、帰りたくなる街・浅草
文章を書いて生きていくのが小さい頃からの夢だったと語る中馬さん。旅暮らしを始めたのは、そんな大好きな文章を仕事にできるようになり、若干の燃え尽き症候群にあった頃だといいます。
「夢にまでみた文章を仕事にできるようになって、“これからどうしよう……” と目標を失っていました。そんなときに友人からいいじゃん、どこでも働けるんだから、と言ってもらって、“あ、そういう選択肢もあるんだ” と思いましたね。この仕事が他人から見ていいな、素敵だなと思ってもらえる理由が旅暮らしにあるのなら、一度自分でやってみようかなと」
旅暮らしをして3年目になる中馬さん。出身は東京都で、学生からOL、フリーランス時代を含めると都内の6箇所に住んでいた経験があるのだそう。
「高円寺、中野、御徒町、三軒茶屋、池袋、立川の6箇所は賃貸・シェアハウスの形で半年以上は住んでいました。仕事の都合にあわせた1週間~1カ月単位のホテル泊なら、山手線沿いのほとんどの街に滞在していたことがあります」
− さまざまな場所を転々とされていた中馬さんが、いつも帰りたくなる街があるそうですね…!
「はい。そうなんです!旅ぐらしの合間にも何度か東京に戻ることがあるんですが、そのときはいつも浅草に泊まっているくらい、浅草が大好きなんです」

− おぉ、浅草ですか! 住まれていた御徒町のすぐ近くですね。
「そうですね、御徒町と同じく下町っぽさがあります。スカイツリーができたことで観光客も増えて、都会の便利さと下町のあったかさのどちらもいいとこどりできる場所だと思うんです」
− 都会の便利さと下町のあったかさの両立というと?
「たとえば、最新トレンドの服やお洒落なカフェに行きたいときはスカイツリー付近に行けばいいし、仕事がひと段落ついて気軽に一杯飲みたいならガヤガヤと賑やかなホッピー通りがあるし。そうやって、自分の気分に合わせて選択できるよさが、浅草にはあると思うんです」
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観光地だからこそ! 毎日飽きない、グルメ天国
− なるほど、中馬さんのお気に入りスポットなどはありますか?
「古きよきレトロな喫茶店とか、釜飯屋さん、天丼屋さんなどたくさんあります! 外で過ごしたい時はスカイツリーでスイーツをテイクアウトして、隅田川を見ながらぼーっと過ごすのもよいですよね。飲食店が充実しているのは浅草の魅力だと思います。OL時代も、ご飯を食べによく行っていたのが浅草でした」

「あとは、浅草でいくつか店舗を展開している花月堂のメロンパンは絶対食べてほしいです…! 本当においしくて!」
中馬さんがそう熱弁してくれたのは、安価で美味しいベーカリーが食べられると人気の花月堂 本店。
どこか古典的で昔懐かしい雰囲気のある店内には、和風スイーツやメロンパンが並び、いつも常連さんや新規のお客さんで賑わう、すてきなお店です。

他にも、ミシュランガイドのビブグルマンに掲載されたラーメン屋「みつヰ:」や、ここでしか食べられない泥鰌鍋がおすすめという「駒形どぜう 本店」など、様々な美味しいお店を紹介してくれた中馬さん。これだけ魅力的な飲食店が多くあるのなら、住みたくなる気持ちもなんだかわかるような気がします。


− 治安や駅近といった観点からは、浅草はどうですか?
「ホテル泊で浅草に滞在することも多いんですが、羽田空港や池袋まではバスが出ていますし、新橋や渋谷には銀座線で一本。すごく便利なんです。スーパーも近いですし、24時間営業のコンビニもあるので、“浅草ってめちゃくちゃ住みやすいのでは…?” と行くたびに思います。
また、観光客の方が多いぶん目立つところに交番がありますし、薄暗い道が少ないので治安の面でも安心ですよね」

− 観光地が近いので、騒音なども心配そうですが…。
「観光地だからこそ、夜はみんなホテルに帰るんです(笑)。夜の浅草寺はライトアップされてとても綺麗なので、本当は夜歩きをおすすめしたいくらいなのですが。
浅草六区通りや雷門通りなど教科書で見るような場所のお店も、割と早めの時間に閉まりますし、接している裏浅草のあたりは住宅街なので、騒音が気になったことはないですね。静かすぎても逆に寂しいと思いますし、適度に人がいる心地よさを感じられて、観光地に住むのもいいなと思えたんです」

「浅草に住んでいる自分を想像したら、好きだなと思った」

− これまでさまざまな場所に住んできた中馬さんですが、暮らす中で、ここだけは譲れないなと思うポイントはありますか?
「静かさと賑やかさの割合、ですかね。静かすぎても怖いし、寂しいですよね。治安としても、あまりにも人の目が少ないとなると怖いと思います。かと言って、賑やかすぎるのも、ずっと遊んでいる感覚になるというか……自分のことを考える時間がなくなって、常にONモードになってしまう気がします。いろいろな場所に住んでみて、やはりその両方のバランスが大事だなと思いました」
− 静かさと賑やかさの割合……いろいろな場所を転々とされている中馬さんらしい答えが聞けた気がします。
「旅をするときもそうなのですが、基本的に、私は心から “自分はここが好き” と言える場所にいたいと思っています。浅草は、小さい頃よく本で読んでいた憧れの文豪たちがこもった場所とも言われていて、文章で生きている自分がそんな場所に住んでいると思うと、やっぱり嬉しいですよね。“浅草に住んでいる自分が好き” と思えるので、やっぱりこの場所は特別ですね」
− 中馬さん、本当に浅草が好きなんですね。
「今はまだ海外への留学を検討していたり、やりたいこともいろいろあったりするので、今すぐ定住というわけにはいきませんが(笑)、それでも私、そのうち浅草に住んでいると思います」

新しさと古さ、賑やかさと静けさ、そして絶品グルメが共存する魅惑の街・浅草。観光地のイメージが強いですが、中馬さんのお話を聞いて、住みたいと思える魅力がたくさん詰まっているのだなと感じました。浅草散策に出かける機会があればぜひ、「住んでみたらどんな感じかな〜?」と想像しながら歩いてみてくださいね!
Text by いち