「お菓子を、進化させる。」快進撃の止まらない製菓企業BAKE Inc.のこだわりと、自由が丘でお菓子のある暮らし

焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を筆頭に、全9ブランドを展開する製菓企業、BAKE Inc.。1ブランド1商品というスタイルと、洗練されたクリエイティブデザインが特徴的で、2020年12月現在、国内外に117もの店舗を構えています。

そんなBAKEですが、創業はわずか7年前、2013年4月のこと。2LDKのアパートに3人で寝泊まりしながらケーキのオンラインサービスの運営を開始し、同12月にスマートフォンから注文できる写真ケーキPICTCAKEを発表したところ大ヒット。翌年ルミネエスト新宿に焼きたてチーズタルト専門店 「BAKE CHEESE TART」を開店するやいなや、20代女性を中心に熱烈な支持を集めたことは記憶に新しいところです。

ルミネエスト新宿という、新宿のシンボル的な商業施設で成功を納めたのちは、お菓子の聖地自由が丘にてBAKE CHEESE TARTの旗艦店をオープン。2016年には池袋駅に焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」、2017年に東京駅構内にバターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」を出店しています。今回はBAKEで広報を務める新井沙織さんに、BAKEのブランドはなぜ次々と人の心を掴むことができるのか、そしてブランドと出店地の関係性についてもお話いただきました。

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人々の心を掴み続けるお菓子ブランド

− 世の中にはたくさんの製菓企業がある中で、SNSを中心に話題が沸騰してあっという間に有名ブランドとなられましたよね。一体、なぜこれだけの支持を集められたのだと思いますか?

「BAKEはクリエイティブにとてもこだわっているので “おしゃれ” というイメージをおもちいただくこともあるのですが、人気を支えているのはなによりも “おいしさ” だと思います。わたしたちはおいしさの3原則として『よい原材料を使うこと』『手間をかけること』『最良の状態で提供すること』にこだわり抜いています。

たとえば焼きたてカスタードアップルパイ専門店『RINGO』では、一度パイの生地を焼いて、生地が少し膨らんだところでカスタードクリームを詰めて、もう一回焼き上げるという工程を踏んでいます。もう一回焼くという一手間をかけることで、りんごとカスタードクリームが絶妙に混ざり合いおいしくなるからです。また、店内にオーブンを設置して、焼きたてをお届けしています。こうした手間をかけられるのは、1ブランドにつき1つの商品に絞っているからこそなんです」

− 1ブランドにつき1つの商品というのは、とても大きな特徴ですよね。私も時折購入しているのですが、商品で悩まなくてよいのでらくだなと思っていました。言われてみれば、オペレーションもかなりシンプルになりますよね。その分、お菓子作りのプロセスが複雑化しても対応できるということだったのですね。

「ほかにも、新しい場所に出店する際に、初めて通りがかるお客様にとってもなんのお店かわかりやすいというメリットがあります。今でこそ、このような専門店業態のお店はたくさんありますが、BAKE CHEESE TARTが始まった2014年当時はまだ珍しかったんですよ」

− なるほど。店舗の内装や紙バッグもそのブランドに特化したものになっているから、ぱっと見でその世界観に入っていけますよね。今は10ブランドを発表されていますが、ヒット商品を出し続ける秘訣のようなものはあるのでしょうか?

「弊社には『8割主義』という考え方があって、8割の方が『好き』と言うだろうという、王道を突き詰めることにこだわっています。チーズタルトやシュークリーム、アップルパイって、『好きですか?』と聞いたら8割の方が『好き』と答えるだろうと。ニッチなところを攻めるよりも、みんなが好きな商品で勝負するという方針なんです。

先ほど例にあげたアップルパイも、りんごの酸味を和らげるためにカスタードを入れたり、苦手な人が一定数いるシナモンは抜いたりして、8割の人に受け入れられる商品になるよう工夫しています」

「ただ、8割主義をベースにしつつも最近は例外もあって、今年の8月にローンチしたバターゴーフレット専門店『SOLES GAUFRETTE』は、弊社としてはチャレンジングな取り組みとなっています。ゴーフレットというお菓子は、チーズケーキやシュークリームと比べたら認知度が低いと思うのですが、フランスで食べたゴーフレットをどうしても再現したいという企画者の熱い思いから商品化されました」

− 一般的なゴーフレットとイメージが違いますね。

「日本でよく食べられているゴーフレットはさくっとしていると思うのですが、こちらはもっちりとした生地に、シャリシャリとした食感のバタークリームをサンドしています。フランスの伝統的な製法にこだわり、バターの風味を存分に感じられるとびきりのおいしさを再現しました」

− 8割主義とは趣旨の異なる商品とおっしゃっていましたが、こちらも8割以上の方々が「食べたい!」と思いそうです……!

BAKE Inc.×新宿ルミネエスト、池袋、東京駅

− 御社の初の実店舗が新宿ルミネエスト店でした。新宿の要所ともいえる場所への出店ですが、スムーズに話が決まったのでしょうか?

「当時はまだ無名だったので、常設店を出店させていただくこと自体が難しかったというのが現実です。ですが、坪数が小さいにも関わらず工房一体型でライブ感をもって焼きたての商品を提供できる、というビジネスモデルにおもしろさを感じていただけて、新宿ルミネエストに出店させていただけることになりました。

新宿というトラフィックの多い場所、かつルミネという女性が多く集まる館というのも、私たちにはありがたいお話でした」

− それが見事に大ヒットとなったのですね。ドラマチック……! では、焼きたてカスタードアップルパイ専門店『RINGO』はなぜ池袋のロータリー付近に出店したのですか?

「アップルパイを食べるタイミングというのは、夜一日頑張った自分へのご褒美とか、家族におみやげとして買って帰るとか、そういうシチュエーションもありますよね。RINGO 池袋店は、お仕事されて帰る方がちょうど通りかかるところに店舗があるのが特徴です。夜22時までやっているので、ちょっと飲んで帰るお父さんが立ち寄って購入されていく、そんな姿がよく見られるんですよ」

再開発が進む池袋は賃貸物件も人気

− なるほど! 想定しているお客様の生活にフィットするよう、出店場所が考えられているのですね。バターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」やバターゴーフレット専門店「SOLES GAUFRETTE」のお店は東京駅構内に出店されていますが、これは手土産に買われる方を想定しているということですよね。

「BAKEのブランドは、お菓子がもつかわいらしいイメージからは少し離れたパッケージデザインが多いので、サラリーマンの方からもとてもご好評いただいています。なので、交通の要所に出すことで手土産として使っていただきやすくしています。もちろん、お土産菓子であっても、その場で作るというストイックさは変わらずもっています。何よりもおいしさにこだわることが、私たちのモットーなので」

− このデザインのおしゃれさ! 本当に手土産にしたくなるデザインですよね。

「創業期より『おいしさの次にデザインが大事』と言い続けていて、弊社ではインハウスのデザイナーやアートディレクターが10人以上活躍しています。先ほども話題に上がりましたが、1ブランド1商品を基本にしているからこそ、パッケージやストアデザインに投資できますし、ブランドイメージと商品イメージが同じになるので、ブランドメッセージもまっすぐにお届けしやすいんです」

お菓子の聖地 自由が丘で「お菓子のある暮らし」

− さて、BAKE CHEESE TARTの旗艦店である 自由が丘店についても聞かせてください。自由が丘といえばスイーツフォレストなどもありますし、お菓子ブランドの聖地といえる街ですよね。こちらに出店するときは、やはり「お菓子ブランドたるもの、自由が丘に挑戦したい!」という思いがあったのでしょうか。

「自由が丘の街に “路面店” で勝負したいという思いがありました。おいしさへのこだわり、工房一体型のライブ感、店舗デザインなど商品の作り方、見せ方、届け方、伝え方のすべてのプロセスを追求したBAKE CHEESE TARTのブランド体験を提供するフラッグシップ店舗となっています。

新宿店は毎日違うお客様が通りかかるのに対し、自由が丘は住宅地と商業地が入り混じっていて、平日はご近所にお住まいのお客様が中心になるという大きな違いがあります。そうした違いがどのように影響するかなどの不安はありましたが、連日たくさんの方に来店いただきました」

− リピーターさんが多いということですよね。

「もちろん週末には他の街から遊びに来られる方も多いですが、平日はリピーターさんが中心でした。わたしも自由が丘店で勤務していたことがあるのですが、オープンした頃から通ってくださっているお客様もたくさんいらっしゃいました。1ブランド1商品の展開とはいえ、季節に合わせたフレーバーはお出ししているので、それを楽しみにしてくださっていましたね。サイズ感や金額も、一人でちょっと食べるのにちょうどよいので、なんでもない日にも気軽にお買い求めいただいているという印象です」

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− お菓子のある暮らしってすてきですね……!

「常連のお客様から、おすすめの食べ方を教えていただいたこともあります。BAKE CHEESE TARTは甘すぎず、ほんのり塩味が効いているので、少し焼き直して塩と胡椒をふって食べると、お酒に合うおつまみになるよって(笑)。その方が、『これを買っておくと娘が一緒にワインを飲んでくれるんだよね』とおっしゃっていたのがとても印象に残っています」

− すてきなエピソードですね。本当にご近所の皆様の生活に溶け込んでいるのだと感じます。自由が丘はデートやお友達との遊びで訪れる人も多いので、よろしければ最後に、新井さんの考える、自由が丘散策プランを教えていただけませんか?

「そうですね……自由が丘は個人のお店が点在しているので、散歩していて楽しい街です。なので、どこかでランチを食べたあとはぜひBAKE CHEESE TARTを買っていただいて、散歩を楽しんではいかがでしょうか。少し南に行くと緑道にベンチがあるのでそこでチーズタルトを食べてもよいと思いますし、九品仏(くほんぶつ)まで行くと浄真寺という綺麗なお寺があるので、そこまで足を伸ばしてみるのもおすすめです」

− ありがとうございました!

いまやあちこちで見かける、BAKE Inc.のお菓子ブランド。行く先々で今日も誰かが誰かを思い、スイーツを購入しています。その笑顔を支える、作り手たちのプライドと野心をかいま見ることのできる取材となりました。そして新井さんにご提案いただいた自由が丘散策プランがすてきすぎて、もはや近隣に住みたい気持ちに……! みなさんもぜひ、足を運んでみてくださいね。

Text by 鈴木 紀子 Photo by 今井 淳史