長く都内で暮らしていても、自分の行動範囲外の街は意外と分からないもの。特に上京したばかりだと、土地勘もなく通勤や通学の沿線で選んでしまいがちです。“住みたい街” として名前があがる街は多いけれど、自分の “住みたい街” を選ぶ基準を考えたとき、何を優先するか。そんな次の引越し候補になるような街を紹介します。
新宿から京王線でひと駅の笹塚。駅前にはフレンテ笹塚などの商業施設が並び、「成城石井」から「無印良品」まで! スーパーでの日用品はもちろんのこと、ちょっとしたお買い物もできる便利さが魅力的。その一方、駅から少し歩けば閑静な住宅街と住みやすさ抜群の街です。
今回は、そんな笹塚を元STU48で女優・タレントの土路生 優里(とろぶ ゆり)さんにレコメンド。上京したばかりで、渋谷や表参道などの繁華街以外はまだよく分からないという土路生さん。
東京の美味しいパン屋さんが知りたい! とパン好きな一面もあるということで、実は意外と隠れた名店パン屋さんが多い笹塚。地元の方に愛されている2店を巡りながら、“住みたい街”から上京のきっかけなどを伺いました。
土路生 優里(とろぶ ゆり)●1999年3月24日生まれ。広島県出身。2017年から2019年までSTU48のメンバーとして活動。卒業後はドラマ「病室で念仏を唱えないでください」(TBS系)で女優デビューするなど、精力的に活躍の幅を広げている。Instagram / Twitter
駅チカの人気店をお目当てに

笹塚には初めて訪れたという土路生さん。興味深げに周辺を見渡しながら、駅前から徒歩3分。一軒目のパン屋さん『オパン』に向かいます。
「仕事以外であまり外出していないので、まだ東京での土地勘が全然無いんです。笹塚って聞いて『どこ?』って思ったくらい(笑)。駅ビルにいろんなショップが入っているのにも驚きましたけど、駅前にスーパー、ドラッグストア、書店、カフェとあったらいいなと思うものが全部揃っているのが便利で住みやすそうです」

『オパン』はオーナーシェフの國井慎二さんが、“毎日食べても飽きない温かみのあるパンを” というコンセプトで2016年にオープン。常時30種類ほどのパンやデニッシュが並んでいます。お伺いした30分ほどの時間も客足が途切れることがなく、行列ができる一幕も。地元の方に愛されている人気店です。

「パンのいい香りがたまらないです。どれも美味しそう! しかもリーズナブルですね」と悩みながらも、名物の『オパンドッグ』と人気ナンバー1という『ミルクフランス』をセレクト。

「毎日立ち寄ってもらえるよう価格は抑えていますけど、だからこそ素材と手間にはこだわっています」という國井さん。次々とパンを焼きあげている途中にお話を伺ったため、國井さんの手にはうっすらと小麦粉が。その姿からは、パンへのこだわりと愛情が伝わってきます。
「定番の『オパンドッグ』はもちろん、デニッシュやフォカッチャ、フルーツサンドなどは季節によって変わるので、それもおすすめですね。今の時期は柿のデニッシュ、サンドは『生チョコマロン』。クリスマスに向けて、シュトーレン、パンリースも用意しています」と、時候にあわせたメニューも豊富。さらに追加で購入を決めていた土路生さんの姿もありました。

「こんなパン屋さんがあったら毎日通っちゃいますね。今住んでいる街にはチェーンのパン屋さんはあるんですけど、こういう地元に根付いた形のパン屋さんが無くて……。ひとり暮らしじゃなかったら、もっと買えるのに!」
こんなところに!? 住宅街に突如現れるパン屋さん

名残惜しい気持ちを抑えつつ、次のパン屋さんへ。商店街を抜け、歩くこと約5分。どんどんと周りの景色は住宅街に……。と、そこに突如現れた看板とかわいい白い外観に驚く土路生さん。2軒目は1階が店舗、2階がパン教室という『ブーランジェリー コンヴィヴィアリテ』。

「こんな住宅街にパン屋さんがあるなんて! 今まで住みたい街って考えたときに、駅前の利便性ばかり考えていましたけど、こういう隠れ家的なお店がある街もいいですね。パン教室が併設されているのもすてきです。今習い事をしたいなと思っているところなので、美味しいパンも食べられて一石二鳥かなと思ってしまいました(笑)」
シェフ・ブーランジェの伊藤清治さんによるパン教室からスタートしたという同店。「パン教室は20年前から。教えているのはフランスやドイツのパンを中心に、全部で200種類以上はありますね。パン屋さんを開く生徒さんもいますが、もっと気軽に教室のパンを買いたいという声で、7年前に教室に併設する形で開業しました」という伊藤さん。こだわりが詰まったパンが並ぶなか、おすすめは『クロワッサン』と『モーンゲベック』。

「『モーンゲベック』って初めて聞くパンですね。甘いんですか?」と興味津々な土路生さんに、「デニッシュなので甘いですよ。アーモンドクリームとけしの実、洋ナシが入っています。ドイツのパンなので、売っているパン屋さんは少ないかもしれませんね」と説明してくださる一幕も。

店頭にはフランスの伝統的な製法を用いたバケットやクロワッサンだけでなく、かわいい猫をモチーフにした菓子パンも! 自宅で猫を飼っているという土路生さんは迷わず『子猫のチョコパン』をチョイス。「顔が全部違うんですよ。うちの子に似てる子がいいな」

「オープンした当初は教室で教えているヨーロッパ系のハードパンが多かったんですが、買いに来てくださる地域の方の好みにあわせて、徐々に種類を増やしていって。今は、ハード系パンから総菜系、菓子パンといろいろなジャンルがそろっています」という伊藤さんの言葉からは、地元の方に愛されている秘訣が感じられます。

美味しいパン屋さんがある街に住みたい

− 地域に根付いたパン屋さん2店を巡りながら、笹塚の街を散策。笹塚の印象は変わりましたか?
「すごく変わりました! 新宿からひと駅だし、ちょっと冷たい都会のイメージかなと思ったんですが、もっと温かみがあるというか。駅の近くには商業施設や商店街、便利なお店が集まっていて賑やかなのに、駅前から少し歩けばこういう静かな住宅街。思ったより都会じゃないところが、住みやすそうだなと思いました。地元が広島なんですが、少し似ていますね」
− 土路生さんが思う住みたい街候補に入りましたか?
「はい! 今の “住みたい街” ナンバー1かもしれない(笑)。美味しいパン屋さんがあるのが、やっぱり魅力的です。広島には、行く度にお気に入りのパンをまとめ買いしていたくらい大好きなパン屋さんがあったんです。東京では、まだお気に入りのお店を見つけられずにいたんですが、こんなすてきなパン屋さんが2店もあるなんて笹塚に住みたいなと本気で思ってしまいました。住む街を決めるときに、好きなものや興味があることを優先して選ぶのも面白いですね」

上京を決意した「挑戦しないで後悔したくない」
− 上京して一年ということですが、上京しようと思ったきっかけを改めて伺えますか?
「STU48を卒業するときに『次は何をしようかな。せっかくだから東京に行ってみようかな』と思ったのがきっかけですね。私、よく周りから『本当に大丈夫?』と言われることが多いんです。それこそSTU48に入るときにも言われましたし。心配されがちなところがあるんですけど、自分のなかでは『とにかくやってみたい』というのがすごく強くて。『やってみなきゃ分からないじゃない?』という気持ちで、東京に来てみました」
− 意外と負けず嫌いな一面があるんですね。
「やってもいないのに『ダメなんじゃない?』と言われるのが、すごく嫌なんです。とりあえず、やってみよう。ダメならダメで仕方ない。やらないで後悔したくないんです。と言っても、今までそれでうまくできたかというと、なかなかうまくいかないこともありましたけど、何もせずに後悔するよりはいいかなと思っています」
− 振り返って上京を後悔したことは?
「ないですね。あのとき、上京しようと決めたことは正解だったと思っています。まだ東京に馴染めていないかもしれないですけど、友だちも少ないですし。でも、東京に来てなかったら、出会えなかった方もたくさんいて、東京だからこそ広がる出会いが毎日刺激的です。実は今日、上京してちょうど一年なんですよ。去年の今日、引っ越してきたんです」
− 偶然にも! 記念の日だったんですね!
「記念日に東京の知らなかった新しい街で、また新たな出会いがあったのが嬉しいです! 今後もこういった一つひとつの出会いを大事にして、いろんなことに挑戦していきたいなと思っています。自分で可能性を狭めることはしたくないので、何でもまずはやってみる。やらなきゃ分からないですから! 映画やドラマ、舞台とジャンルを問わず、丁寧に向き合いながらチャレンジしていきたいです」

【インフォメーション】
「オパン」http://www.opan-bakery.com/
住所:東京都渋谷区笹塚1-9-9
営業時間:8:00~19:00
定休日:月曜日、火曜日
「ブーランジェリー コンヴィヴィアリテ」http://www.convivialite.tokyo/
住所:東京都世田谷区北沢5-14-14 1F店舗 2F教室
営業時間:10:00〜19:00
定休日:月曜日、火曜日
Text by 吉田 光枝 Photo by 星野 佑 【取材協力】千葉由知(ribelo visualworks)