引越しには、ドラマがある。あの日、あのとき、どんな想いで新生活をスタートしたのか、そして当時の経験が今にどうつながっているのかを伺うインタビューです。
今回お話を伺ったのは、10歳の頃から芸能の世界に身を置いている女優の本仮屋ユイカさん。一人暮らしを始めてから、価値観が変わっただけでなく、女優業にもよい影響があったと語ってくれました。
1987年9月8日生まれ、東京都出身。10歳の頃から芸能活動をスタート。ドラマ『3年B組金八先生』第6シリーズ、映画『僕等がいた』等、数々の人気作に出演。2012年~2015年には、情報番組『王様のブランチ』で4代目MCに就任し注目を浴びる。2020年12月より上演の舞台版『オリエント急行殺人事件』への出演も控えている
女優業にも影響をもたらした一人暮らし
− 本仮屋さんは東京ご出身ですが、一人暮らしを始めたキッカケはなんだったんでしょうか?
「一人暮らしをしようと思って始めたわけではなく、妹が嫁いでいって、実家に私一人が残されたんです。そして実家がだんだん縮小されていって、気付いたら一人暮らしになっていました(笑)。でも、たぶんそういう経緯がなかったら一人暮らしをしようと思わなかったので、結果的にはラッキーでしたね」
− 一人暮らしを経験して、ご自分の価値観や考え方に変化はありましたか?
「一人は最高! 一人は天国! と思うようになりました。最初は家族もいなくて寂しくて、どうしたらいいのって思っていたけど、今はいつテレビをつけてもいいし、いつ洗濯機を回してもいいし(笑)。今後また誰かと生活をするなんて、できるのかな? って思うほど、一人での生活を満喫しています」
− では、仕事に対しては何か良い影響は出ましたか?
「私は小さい頃からこの仕事をしていますが、周りのみんなが普通にしていることができないというコンプレックスがあったんです。でも、一人暮らしをすることで、みんなが普通にしていることができるようになるんですよね。たとえば、料理をする、自分でゴミを出す、掃除機をかけるとか。結局、女優は作品の中で “普通の人を普通に演じる” というところが仕事になるので。特に私は、自分のことをちゃんとできていない人間だと思っているので、普通のことを普通にすることで、私でも人として生活できるんだなと自信や学びになりました」
− とてもしっかりされているイメージがありますが、あまり自分に自信がないタイプなんでしょうか?
「そうなんです。私の妹が、本当に素晴らしい人で。料理もすごく美味しいし、家事も効率的にできるし、みんなが気持ちよく過ごせるように動ける人なんですよ。でも私は効率が悪く、小さなことで一つずつ止まってしまうタイプなんですよね。妹というしっかりとした人が身近にいながら育ってきているので、私はできないタイプの人間なんだなって気付いたし、できる人への憧れもある。だから一人暮らしを通して、まだまだできないこともあるけど、できるようになったこともたくさんあるから、昔よりも自分に自信がもてるようになりました」

お部屋探しの必須条件は「魚焼きグリル」!?
− これまでに引越しは何度されているんでしょうか?
「一人暮らしとしては4回しています」
− 物件を選ぶ上でのこだわりがあったら教えてください。
「魚焼きグリルがなきゃイヤ! あと、キッチンはIHじゃなくてガスがいいです。こだわりというと、それぐらいですかね」
− 魚焼きグリル! すごくピンポイントですね(笑)
「鮭を焼きたい、サンマを焼きたいって思ったときに、食べられないのは悲しいので……。床暖房は我慢できても、魚焼きグリルは我慢できない(笑)。IHよりもガスがいいというのも、料理をするときにガスの方が火力的に美味しくできあがるんですよね。それに、私は冷え性なんです。だから、温かい熱を体に取り込もうって思ったときに、電気よりも火の方が親和性が高くて。火で沸かしたお湯を飲みたいし、そのお湯で料理したい。だからガス派です!」
− 食へのこだわりを強くもたれているんですね。
「でも、大して料理はできないんです(笑)。お風呂ももちろん広ければ広いほうがいいけど、シャワーヘッドは自分で変えられるし、入浴剤もお気に入りのものを使えばリラックスできる。でも、キッチンはあとから変えることが難しいので。あ、あとはリビングもなるべく広いほうがいいな。毎日ストレッチや筋トレをしているので、広々と使えるところがいいですね」
− 間取りや階数も特に気にならないですか?
「そうですね。これまで選んできた物件を思い出しても、共通点というものがないです。ただ、部屋を見たときに、なんか落ち着かない、なんか好きじゃないって思うところはやめています。そういう自分の中での引っかかりは無視しないようにしています」
引越しは “リセットのタイミング”

− 引越しをする上で一番苦労することはなんでしょう?
「すべて大変です(笑)。荷物を梱包して荷解きするのがいつも大変……。でも、そのタイミングで不用品の見直しができるんですよね。持ち物は引越しでもなければ増え続ける一方なので、一度リセットできるのが引越しのよいところだと思います。引越すと、ゼロから人生スタートできるって思えるので、リフレッシュになるんです」
− 一人暮らしをしてからの引っ越しは4回とのことですが、引越しをしようと決めたキッカケのようなものはあるんでしょうか?
「単純に更新時期が来るからです。次の物件を探さなきゃってなるだけです(笑)」
− 同じところで更新はされない?
「更新はあまりしません。時期がきたら新しいところを探すことが多いですね。話を聞いていると、芸能界の方はそういう考えをもっている人が多いみたいです。みんな引越し族(笑)」
− では、もし次に引越すとしたらどんな条件の物件がいいでしょうか?
「今まで運転免許は持っていたんですけど、ずっとペーパードライバーだったんです。でも最近、運転の練習を始めていて。だから、次住むなら駐車場付きで、駐車場からすぐ大通りに出られる物件がいいです。まだあんまり運転が上手じゃないので、車庫入れが簡単なところ(笑)。でもまだ練習中なのでどうなるかわからないけど、運転が上手くなったらそういう物件に住んで、車ライフを満喫したいですね」
TOKYO MXドラマ『片恋グルメ日記』

− 原作を読んだ上で脚本を読まれて、印象が変わった部分はありましたか?
「原作よりもドラマの脚本の方が、さらにオタク感が増したなと思いました。現代のオタク感がすごく出ているなって(笑)。私自身も言ったことのないセリフばかりで、オタク用語は声に出すのが楽しかったです」
− 役作りのために髪も切られたとか。
「そうなんです。24cm切りましたね。私が演じるコロ(所まどか)は、原作では髪が短くて、でも当時の私は髪が長かったんです。髪の長い私がメガネをかけて食べ物を食べたところで、原作にあるポップさが出せるのかなって考えました。原作の食事シーンは、躍動感や軽やかさがあるから、それを表現するには原作みたいに髪が短いほうがいいなって。
まだこのお話が実現するか決まっていなかった段階で、もう『切ります! 切りたいです!』って言って切っちゃったんです。ドラマの制作チームも、まさかこのドラマのために切ったとは思っていなかったみたいで(笑)。でも、できあがった映像を観てみて、やっぱり切ってよかったなって思いました。食べ物と顔が映ったときのバランスもよいし、あの躍動感やコミカルさは、髪を切った私だから出せたものだなと感じました」
− コロという女性を演じる上で意識したことを教えてください。
「自分が嫌だな、怖いなって思った気持ちや、不安定でいるようなリアクションを選択するようにしました。一番自分が繊細にいられるポイントに立つことをすごく考えましたね。でもそれは、ちょっと子供っぽく見えたり、大人だったらそんなリアクションしないよねってことになるんですけど、コロの恥ずかしさや自意識過剰なところ、純粋さに繋がる気がして、そこのポイントを探るのを意識していました。大人になるといろんな社会的な顔があると思うんですけど、コロを演じる上ではそういうものをほとんど外していました」
− ご自身と似ているところ、逆に全く違う感性をもっていると感じる部分はどこですか?
「コロは最初、お菓子ばかりを食べていて、食事にあまり興味がなかったんですけど、私は食べることが大好きなんです。お米が命(笑)。だからそこは全然違うなって思いました。ただ、彼女が悩みながらも、誠実に人と向き合っていくところや、とても素直ですぐ人に影響されるという部分は似ているかな」
− 本仮屋さんは影響されやすいタイプ?
「すぐ影響されます。今、欲しいなと思っているニットがあるんですけど、友達3人から『ユイカっぽくない』って言われていて、買うのを躊躇しています(笑)。私は買いたいんだけど、3人も反対してくるならどうしようかなって。好きなものを買えばいいじゃんって感じなんですけどね(笑)。
でも、コロほど悩まずに行動するとは思います。どちらかというと、当たって砕けるタイプだし。でもそれは、大人になるタイミングで開き直っただけで、本当はコロみたいに怖い、恥ずかしいと思っている部分もまだまだたくさんあるなって。そういう感情は捨てたと思っていたけど、自分の中に弱い自分はずっといるんだなって、コロを演じることで改めて気づくことができましたね」
− 本作は食べるシーンも見どころの一つですが、撮影はいかがでしたか?
「すっごく楽しかったです! 一つの食事シーンで二人前弱は食べているんですけど、それだけ食べられる女の人ってなかなかいないと思います(笑)。だから食べっぷりには注目してほしいです。もともと食べることが好きだったので、バラエティや情報番組では、美味しそうに見える食べ方をずっと研究してきたので、そのスキルは発揮されたと思います。監督からも『本当に美味しそうに食べるね』ってすごい褒められていました」
− 時間帯的にも飯テロですよね。
「そうなんですよ! だからみんな食べ物を用意して観るか、同じものを食べてから観た方がいいと思います。そうでなきゃ絶対につらいと思う(笑)」
− では最後に、改めて見どころをお願いします。
「少女漫画が原作ではありますが、みんなが大好きな食べ物も出てくるし、どんな年齢の方でも、性別も問わず、楽しんでいただけると思います。リラックスしながら観ていただいて、明日美味しいもの食べたいなって、明るい気持ちになっていただけたら嬉しいです。ぜひご覧になってください!」

2020年10月12日(月)よりTOKYO MXにて放送中
【あらすじ】
本仮屋ユイカ演じるよつば出版の少女漫画誌 『ジュース』編集部員・所まどか(通称:コロ)は、現実の恋愛に踏み込めない 33歳。そんな彼女は、ある日会社でモテ四天王の一人・八角直哉(平岡祐太)が牛丼を食べている笑顔を見て、恋に落ちる。その事を担当漫画家に相談すると、「本当は彼と一緒に食事したい。でも、その勇気がないなら、彼の食べたものを調べて食し、彼を感じなさい!」と “食事ストーキング” を勧められる。アドバイスを受けたコロは、牛丼、サバの味噌煮、オムライスなどを食すことで、八角を感じ、妄想を膨らませていく……! 果たしてコロの恋の行方は……!?
【放送情報】
『片恋グルメ日記』
毎週月曜22:00~22:30
【原作】 アキヤマ香 『片恋グルメ日記』(双葉社「JOUR すてきな主婦たち」掲載)
【出演】 本仮屋ユイカ 平岡祐太 藤田玲 中村静香 岡本杏理 兵頭功海 村山和実 竹森千人ほか
【配信情報】
▼スマホアプリ/Web サイト『エムキャス』(https://s.mxtv.jp/mcas/)にて全国無料でリアルタイム配信。また、見逃し配信として、最新話放送から1週間は『エムキャス』にて全国無料で視聴可能。
▼TELASA、au スマートパスプレミアム、J:COM オンデマンド、milplus にてTOKYO MX 放送後から随時公開。最新話まで見放題独占配信!
公式サイトはこちら
Text by 榎本 麻紀恵 Photo by 今井 淳史