「チョコバナナ作ってみたぞこの野郎」荒々しいコメントに添えられた動画は、動物を模したかわいらしいチョコバナナを女子プロレスラー世志琥(よしこ)さんが熱心に作っている姿。
チョコバナナ作ってみたぞこの野郎🍌🔥#チョコバナナ #おうち夏祭り pic.twitter.com/cBRMDyYIO4
— 世志琥 (yoshiko) (@yoshiko_sead) August 2, 2020
怖いのにかわいい! このギャップにハマる人が続出し、いまやTikTokのフォロワー数33万人超え、Twitterのフォロワー数14万人超えと一躍時の人となった世志琥さん。世志琥さんは女子プロレスラーとして普段どのような日々を送っているのか、そしてその日常の中でお菓子作りはどういう存在なのか、お話を伺いました。
プロレスとお菓子作りに目覚めた少女時代
昔から食べることが大好きだったという世志琥さんが、お母さまのお手伝いとしてキッチンに立ち、料理をするようになったのは小学生の頃。「作ること」に広く興味をもっていたといい、自然とお菓子作りにも挑戦するようになったそうです。
− 現在にいたるまでお菓子作りにハマっていらっしゃいますが、お菓子作りのどういうところに惹かれるのですか?
「作ることが好きなので、何かができあがっていく過程にはすごく楽しさを感じます。あとは、自分の想像通りのものができたときの達成感や、食べてみたら想像以上においしかったときの喜び。人にもよく食べてもらうので、おいしいと言ってもらえたり、笑顔が見られたりすると嬉しくなります」
− お菓子作りといえば、すごく正確に分量を測らないと失敗してしまうシビアさがありますが、そこはストレスに感じませんか?
「それが得意なんですよ。きっちり測って、0.1gの狂いも許しません! なので失敗も全然しないですね」
− お菓子作りで失敗知らずはかなり上級者ですよね……!
「失敗自体はほとんどしないのですが、作ってみて『思ったのと違った〜』と思うことはたまにありますよ。この間メレンゲでできたプードルクッキーを作ったのですが、撮影している間にどんどん表面が溶けてきてしまって、手にくっついて離れなくなったのは笑いました。これは大変なお菓子だなと(笑)」

世志琥さんが女子プロレスと出会ったのも、やはり小学生の頃。お母さまの知人が女子プロレスラーで、試合の応援に行ったことがきっかけだったそうです。
− 女子プロレスを初めて見たとき、どう思ったのですか?
「知識が何もない状態で初めて見て、『かっこいい!!』とすぐに夢中になりました。そこから何回か見に行って、自分なりに勉強もして、『将来絶対に女子プロレスラーになる!』と周囲に宣言するほどでした」
− そのときお母さまはどんな反応でしたか?
「『お前の人生なんだから応援するよ』と言ってくれていましたが、本当になるとは思ってなかったと思います(笑)。実は中学に入ってからは、一度プロレスから離れたんですよ。友人関係も変わり、遊んでいるのが楽しかったのかな。それで卒業後は普通に、内装の仕事についたんです」
− そうだったんですか! 内装のお仕事はどうでしたか。
「働くということ自体が新鮮でしたし、仕事内容も元々好きな『作る』ことなので楽しめました。肉体的にはしんどかったですけどね……一緒に入社した女の先輩は1日で辞めました(笑)。そして、『朝から晩まで働くってこんなにきついんだ、お金を稼ぐって大変なんだなあ』と学びました。一度社会に出たことは、すごくよい経験になったと思います」

− そこからどのように、再び女子プロレスの世界へつながっていったのですか?
「あるときたまたま、自分が女子プロレスを見に行っていたときによく出場していた風香(ふうか)さんのブログを発見して、『よしこです! 覚えてますか?』とコメントを残したんです。そしたら『覚えてるよ、プロレスやらない?』って返信がきて」
− えっ(笑)
「えっ、ですよね(笑)。でもわたし自身不思議なのですが、その一言でプロレスにのめり込んでいた頃の情熱が蘇ったんです。そしてすぐに『やります!』と返事しました。もう、あれから10年ですね」
− 内装の仕事から、女子プロレスの世界へ。かなり違う生活になったのではありませんか?
「そうですね、内装の仕事は男性社会でしたが、女子プロレスは女性社会なので。寮生活だったのですが、15・6歳の女子が集まっているのできゃーきゃーわちゃわちゃ、いつもつるんでいるという感じで、なんだか学校生活の延長みたいな感じで楽しかったです」
− 練習はハードだと思うのですが、つらくなかったですか?
「やっぱり初めのうちは、見ているのと実際にやってみるのとでは大違いだなと思い知りました。プロレスラーが試合の中でとっている受け身一つとっても、簡単そうに見えてもすごく難しくてたくさん練習しないといけない。というか、まず首を鍛えるところから始めるので、根性が必要です。
そんな中でも、やっぱり小学生のときからずっと憧れの目で見てきた世界なので、あの技やってみたい、この技に挑戦したい、という意欲があったので楽しかったです。新しい技を覚えていくのがすごく嬉しかったですね」
「プロレスラーとしての顔も見てもらいたい」

− 普段はどのような練習をこなしているのですか?
「ウォーミングアップから始まり、基礎体と呼ばれる筋トレのようなものや走り込みをし、受け身練習や技の練習、スパーリング(試合形式の練習)などをします。わたしの所属する女子プロレス団体、SEAdLINNNGの練習はちょっと変わっていて、毎回メニューが違うので飽きずに楽しめています」
− 試合となるとまた、全然違う楽しさがあるのでしょうか。
「そうですね、試合ではお客さんのために戦うので、声援や反応が聞こえてくるのがすごく嬉しくて楽しいですね。……お客さんの力って、本当にすごいんですよ。勝てば一緒に喜んでくれて、負けたら一緒に悲しんでくれる、すごく大きな存在です。お客さんがいるからこそリングに立てているし、強くなれます。もっと喜ばせたいという一心で頑張れるんです」
− 試合での世志琥さんは、ものすごく勇ましいですよね。
「舞台に上がると、スイッチが入るんです。もう一人の自分になるような感覚です。言い換えると、“まわりを意識している自分” になるんですよね。リング上では四方から見られていますから」
− では、お菓子作りをしているときは……?
「“素の自分” ですね。オフの顔なので。一人で作ることが多いので、自分だけの世界に没頭している感じです。ストレスがたまると無性にお菓子作りがしたくなって、深夜から作り始めることもあります」

− なるほど。2つがお互いにバランスを取り合っているのですね。SNSで動画が大変話題になりましたが、どう思われましたか?
「TikTokをよく知らずに始めたので、こんなに拡散力があるということにびっくりしました。自粛期間に入ってなかなか試合ができず、先も見えない中で、ファンの方に少しでも何か楽しんでもらおうと始めたのがきっかけだったんです。今、プロレスファン以外の方にもたくさん知っていただけたので、このチャンスを生かして、わたしの女子プロレスラーとしての顔もぜひ見てもらいたいです」
− 見に行ってみたいと思っているのですが、選手が客席で戦い始めるのがちょっと怖いんですよね……!
「他の選手がちゃんと守りますから安心してください!」
− わかりました! 世志琥さんの考える、プロレスの魅力を教えてください。
「プロレスって、戦う過程が人生そのものだと思うんです。困難に立ち向かって、やられてもまわりの人に支えられて立ち上がって。でも最後は自分の力で、お客さんの声援で勝つ。一戦一戦に物語があるので、それをぜひご自身の目で見に来てほしいです」
− 今後の目標と夢はなんでしょうか?
「目標は、プロレスの聖地である後楽園ホールを満員にすること。そのためには新しいお客さんを増やさないといけないので、今後も発信活動を頑張っていきます。夢は、満員の会場でお客さんの声援をめちゃくちゃ浴びること。今はベルトも持っているので、たくさんのお客さんが見てくれている前で戦いたいなと思っています」
プロレスの話をするときもお菓子作りの話をするときも「お客さんが喜ぶのを見るのが好き」「お菓子をあげて喜ぶ顔を見るのが好き」と、いつも誰かの存在を前提にやりがいを語られていたのが印象的でした。世志琥さんの強さを裏付けているのは、いつも誰かを想う優しい心なのだと知りました。
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