いつも帰る場所だから、好きなものに囲まれていたい。そんな思いでこだわりのお部屋を作り上げている方たちを訪ね、こだわりポイントや人生観などを取材していくコーナーです。
今回ご紹介するのは都内にお住まいのイノウエさんのご自宅。何よりも「住みやすさ」を重視して部屋づくりをしていると語ってくれました。
インダストリアルで機能美あふれるお部屋
コンクリート打ちっぱなしの壁に、本物の木材を使い自作したダイニングテーブル。このように、無機質な中にあたたかみをプラスして絶妙なバランスをとっているのが、イノウエさんのスタイルです。
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学生時代は美術大学で彫刻を学んでいたということで、DIYもお手の物。「生活感のない部屋」をテーマに、イメージ通りのインテリアを自ら制作していると言います。
「自分で作るメリットは、ぴったりの寸法で作れることと、部屋のテイストにかなり合わせられる点ですね。模様替えで移動させるときも、自作のものであれば切ったり延長したりというアレンジも簡単にできます。
生活感をなくすポイントは、隠すところと見せるところをきっちり分けてメリハリをつけること。たとえば自分は靴が好きなので、靴収納はディスプレイしようと考えました。コンクリート壁に直接棚をつけているんです」
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「照明も手作りです。天井にソケットがないので、紐をはわせて壁のコンセントまで引っ張っています(笑)」
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部屋の導線も美しく、たとえばダイニングからもリビングからも見られる位置にテレビを配置していたり、ベッドのあるエリアは玄関から直接目に入らないよう設けられていたりと、細かな配慮が見られます。
「住みやすさはかなり重視しています。たとえば間接照明を全部IoT化していて、近くに行かなくてもスマートフォンでON/OFFができるとか、収納エリアを大きく作って物があふれないようにするとか。家はあくまで生活する場所なので、住みやすさとおしゃれさを両立させることがテーマですね」
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0から始まった部屋づくり
驚かされるのは、このお部屋はもともと広い1Kの間取りだということ。
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どちらかというとテナント利用を想定して作られたのだろうと思われるお部屋で、収納も一切ありません。どう家具を配置してよいものか戸惑いそうなものですが、イノウエさんは「真っ白なキャンバスに見えて、とてもわくわくした」と振り返ります。
「カスタマイズ性の高さは大きな魅力でした。引越しを決めたときは最初に間取りの寸法を全て測って、どこに何を配置するのか事前に計画しました。DIYに必要な資材を前もって送っておくことで、引越し後は一気に部屋づくりを進めることができました」
驚かされるのは、大胆にも収納スペースを真ん中にもってきていること。なんとこの、TV裏のエリアが収納スペースなのです。
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「もともと、木の壁を作ってみたいと思っていたので、業務用のスチールラックに木を貼り付けて “壁” にしようと構想しました。こうすることでテレビ上にある照明のように、穴を開けなくてはいけないものでも取り付けられるようになりました。裏を収納エリアとし、服の収納や、加湿器のような季節ものの家電をしまっています」
“無理のない暮らし” を体現
まるでモデルルームのように美しく作り込まれた井上さんのお部屋。「いつも頻繁に片付けをしているのですか?」と質問すると、奥深い回答が返ってきました。
「無理のない部屋づくりをすると、散らかることはないんですよ。よくルンバを買ったことで床に物を置かなくなったという話を聞くことがあるように、元々正しい定位置が決まっていればやるべきことは “戻すだけ” ですから。もしその状況がキープできないのであれば、その定位置の設定に無理があったというだけだと思います。
また、基本的なルールを作って守るというのも大切です。食べたものはキッチンに持っていくとか、朝起きたらベッドメイキングするとか。無理のない範囲でルールを決めておくんです」
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「無理をしない」というキーワードがしばしばイノウエさんから聞かれるのは、イノウエさんの価値観にもつながるポイントだから。
「僕の考えとして、ライフスタイルというのは無理してやるものじゃないと思っているんです。たとえばインスタグラムに写真をあげるときに、その写真のためだけに片付けるというのは “無理している状態” だと感じます。日常的にその状態であることが、自分にとってはすごく大切ですね。
それは部屋だけのことではないです。雑誌に載っているような、何気なくふらっとおいしいコーヒー店に立ち寄る生活に憧れるなら、そういうお店がある地域に引っ越すしかない。そうやって理想の暮らしを現実にする方法をいつも考えて、嘘なく、自然体で実践できるように心がけています」
間取りを含めた部屋という空間、オリジナルの家具、そしてライフスタイルまでクリエイティブに作り上げてしまうイノウエさん。そこに共通する “自然体” という考え方に触れ、「暮らしを楽しむってこういうことか」とヒントをいただいた気持ちになりました。